| | | | 伝説と歴史の交差するところ、 地中海性植生のただ中に、 そして人の心の中にあるブドウ畑 「地中海というと、我々は自然のうわべだけの美しさしか見ない傾向がある。例えば、海と太陽、その地形と植生は素晴らしい自然のたまものだが、自然にはやっかいな一面もあるのだ。花の咲くその地面は石ころだらけで、人が少しでも注意をそらし、手入れを怠ると、根気強く築かれた山腹の段々畠は崩れ、やぶとなり、灌木がまた生えてくる・・・どの海岸でも、開墾と放棄の劇的な変化が見られる。それは、あたかも人間が空間をまずく管理するとその空間が逃げだすかのように、人間の支配は常に部分的でむらのあるものにとどまるのだ。」Maurice Aymard、「La Méditerranée」、Fernand Braudel 監修 
ピク・サン・ルーとロルチュスは伝説と歴史の交差するところにあります。『うそつきパパ』によると、これらの山は、失恋した巨人のこん棒の一撃によって生まれ、この怒り以来、山はマスクラMasclaの泉で泣いているそうです。ピク・サン・ルーは、ルー騎士の名から来ています。この騎士は愛する女性の思い出を胸に隠遁し、思いをほとばしらせるために、そそり立つ岩だらけの峰に来ていたのです。ロルチュスの数々の洞窟はネアンデルタール人の避難所で、まるでカリブーの最初のバーベキューをするためのバルコニーのような場所です。ロルチュス(Hortus:ラテン語で庭の意)はこの片隅に楽園を見いだしたローマ人が与えた名です。ここはMagueloneの司教達の静養所でした。仕事に疲れた彼らは、この高地に活力を取り戻しに来ていたのです。またここはワインとオリーブの地で、海岸の町へ羊毛や木炭を売りに行くあらゆる種類の羊飼いや炭焼き人が行き交う地でもありました。 ピク・サン・ルーとロルチュスはセヴェンヌの最初の城砦です。リオン湾Lion湾を眼下に置き、ヴァントゥVentoux山からカニグーCanigouを見晴らす地にあります。オリーブとエニシダそして崩壊地にはシャクヤクとタンポポが生える岩と峰の地。洞窟の地。フクロウとワシミミズクらの鳥とほ乳類の聖域。カシの雑木林ではノロシカとイノシシが村祭り。たくさんのうさぎとヤマウズラの雛はタイムとムスクとカデの香りの中、ローズマリーの枝で遊んでいるのです。 最初のヒトがロルチュスの岩壁のふもとに居ついたときから、今日まで、ヒトは景観を自分のイメージに造りかえることをやめませんでした。家畜を放牧し、作物を育てるためにやぶを払い、山の斜面から崩れ落ちる岩石を押しとどめるため段々畠を造り、水路を造り、羊小屋、住居、倉庫を建て、村とブドウ畑や夏の放牧地にある羊小屋を結ぶ道をつけ、神をたたえる隠遁所や城を造ってきました。景観は常にヒトの願い、抗う高地を住み良い所にする意志に従って進化してきました。それぞれの地にはその地特有の複雑な均衡があるのです。

ブドウ畑は連綿と続くこの土地、気候、地形、歴史、そしてヒトの存在の中に組み込まれ常にそこにありました。
「おおよそ地中海は三つの平衡を保っている。オリーブの木とブドウ、そして小麦だ」
Maurice Aymard
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